犠牲の上のいのちを忘れない~「作家の口福」より~

「作家の口福」という本を読みました。著名な作家20人の食に関するエッセイ集です。
朝日新聞の土曜別刷り「be」に連載されたコラムが収録されています。

20人の豪華作家たちの食に関するエッセイ

中島京子さん、三浦しをんさん、江國香織さん、角田光代さん、恩田陸さんなど、好きな作家さんが多く載っていたので、読んでみました。

作家の口福

ヤギ肉のシチュー

村山由佳さんは、モンゴルの大草原で、遊牧民の男の人達がヤギを生きたまま解体し、料理してくれたヤギ肉と野菜のシチューを食べたことがあるそうです。

犠牲の上のいのちを忘れない

肉はスーパーで買うものと思っていた私にとっては脳みそが二重にブレるくらいの衝撃だったにもかかわらず、神聖な宗教的儀式を見ているようで、体じゅうががたがた震えるほどの感動に打たれていた。

加工された肉をスーパーで買うことが多いので、こういう場面を見ることは貴重な体験だと思います。

新鮮なヤギ肉は臭みもなく、口の中でほろりと崩れた。
その瞬間、ヤギのいのちが私のおなかの真ん中にすとんと入ったのがわかった。

食べることに対する村山さんのスタンスは、このとき固まったそうです。

野菜と同じように、肉もおいしく頂く。ただし、自分のいのちが他のいのちの犠牲の上にあることを決して忘れないでおく。

村山由佳さん

そして、感謝というより哀しみを感じたという、このラストの文章が印象に残りました。

食べるとは、生きるとは、あらかじめ哀しいことなのだ。
だからこそ、いつかは失われるいのちが愛しい。

前に、風野真知雄さんの小説「隠密 味見方同心」を読んだ時に、人間は他の命を奪わないと生きていけないと書いてありました。

風野真知雄さんの「隠密味見方同心」を読んで自覚したこと
先日、彼が、「魚をさばくのは褒められるのに、肉を加工するのは嫌がられるのはなぜだろう」と言いました。同じことをしているのに、と。たし...

私も、食べるときはおいしく調理して、感謝して食べようと思います。

安定剤

森絵都さんのエッセイも面白かったです。
森絵都さんはずっと、食品に入っている安定剤を精神安定剤だと思っていたそうです。

あるとき、安定剤とは精神安定剤ではなく成分安定剤であることに気づき、正解を確認しようと夫に電話します。

「私いま気がついたんだけど、食品表示にある安定剤っていうのは、精神安定剤じゃなくて成分安定剤のことなんだよね。知ってた?」
長い沈黙の末に夫は言った。
「おまえの人生も綱渡りだなあ」

おかわり

自宅や仕事場で創作活動をされている作家さんたちの食生活が垣間見えて、興味深い本でした。続編もあるようなので、読んでみたいです。

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